「交通保安係」、国鉄末期頃の職名である。今、そういう職名があるのか、いやそれどころか職種自体があるのか否かも知らない。職種はわかりやすく言えば、踏切の警手である。
列車のヒーター

現在では、電車、客車は電気による暖房であるが、その昔は蒸気による暖房であった。
蒸気機関車は自らのボイラーで発生させた蒸気を、電気機関車/ディーゼル機関車は蒸気発生装置(SG : Steam Generator)で発生させた蒸気を客車や荷物車に蒸気管で引き回し、暖房としていたのである。
(写真上) 客車に取り付けられているヒーターホース。(スハフ42 136)
(写真上) ヒーターホース。
(写真上) 下側の太い方がヒーターホース。上側の細い方はブレーキホース。
余談だが、自連の解放テコは〇と□が組み合わさった鍵穴状のテコ受けの中で、通常は□の中に落ち個々んでいて勝手に回らないようになっている。
(解放テコのテコ受けに収まる部分が平らになっており、□部の中では回らない。)
解放テコを操作するときはテコの平らになっている部分がテコ受けの〇の部分に入るようにテコを持ち上げて操作する。
蒸気に包まれる機関車や連結面の間から立ちこめる蒸気ももう見ることが出来なくなった。
荷物列車は客車列車に比べると、主要駅での増結や解放の頻度が高い。
増結、解結を行う駅では操者、構内係がホームで荷物列車の到着を待つ。
屋根からもうもうと蒸気を沸き立たせたEF58が入線してくる。
まさに、力行している蒸気機関車かと思えるほど蒸気が立ちのぼっている。
機関助士は、増解結を行う駅に到着するまでに荷物車に送っていた蒸気を大気に放出するように切り替えている。このため、機関車の屋根から蒸気が放出されているのだ。
(写真上) この写真の蒸気の出方はかなり控え目だが・・屋根から蒸気を排出するEF58。
また、牽引しているのは荷物車ではなく客車。
列車が到着すると構内係は連結面に降り立ち、入換の準備だ。
まず、皮手をはめヒーターホースの留め金(角(つの)付きユニオンナット)をハンマーで叩いてゆるめる。
ゆるんだら、留め金を手で回し、ヒーターホースを取り外す。
お湯があふれ出てくる。
機関車側で荷物車/客車向けに送り出す蒸気を止めるタイミングが遅ければ、このときにはまだ熱い蒸気が出ることもある。
ヒーターホースがはずれれば、ブレーキホースを解放して自連のナックルを引き上げ、作業完了を操者に通知する。
操車の合図で機関車はホームを離れ、増結する荷物車が待つ仕訳線に入る。
増結車に機関車の連結が終了するとブレーキホースをつなぎ通気する。その後は、ヒーターホースをつなぐ番だ。
このヒーターホース、黒光りするような新品だと大変だ。
固くて曲がりにくく、蒸気管の口にあわせられないのだ。
やっとのことで口があうと留め金を締めていく。
手でまわらないくらいに締まったら、ハンマー(蒸気管レンチ)の出番である。
この、ハンマーは普通のハンマーとは異なる。
柄も鉄製で、ヒーターホースの角付きユニオンナットにあうように半円状に曲がっている。
その先は、留め金の角にはまる穴があいている。
その穴を突起にはめ込みグイグイと締め込んでいき、最後はハンマーでゴンゴンゴン。
(写真上) 蒸気管レンチにもいろんな形状があったようだ。
増結/解結を終えた機関車は、荷物車を引き連れてホームに戻っていき、残こされていた荷物車たちの先頭にたつ。
連結作業が終了すると構内係りの「ヒーター、オーライ」の合図で機関助士は荷物車/客車に蒸気を通し始める。
(写真上) 暖房用の蒸気に包まれる機関車。
(写真上) デッキの左側手摺りには使用していないヒーターホースをかける場所もある。
(写真上) これはジャンパー