突放された貨車

(2000/04/23)



突放されて惰性で動いている貨車は構内係によってブレーキがかけられる。
構内係がまず、一番に考えることは、この仕訳線に入ってきた貨車をどこで止めるかだ。つまり、あと何両この線に入ってくる予定があるのかによって手前で止めて良いのか、もっと奥まで入れておかなければならないかが決まってくる。
ワムのように短い車両もあれば、コキのように長い車両もある。これらの状況を入れ換えの前の段階で把握しておき、一番最初に貨車を止める位置の見当を付けるのである。

最初の貨車を線路の入り口付近で止めてしまっては後の貨車が入りきらなくなる。接触限界ぎりぎりまでに収まればともかく、ポイント上に止まってしまっては大目玉である。
(車両接触限界標識はポイントから分岐される線路と線路の間に設けられている標識である。(俗にトーフと呼ばれていた。)
この標識は15cm角、高さ10cmほどの白い角材で、線路間にちょこっと顔を覗かしているもので、ポイントの分岐点側から見てこの標識より遠方に車両を止めなければならないことになっている。標識より分岐点側は2つの線路間隔が狭く、車両がぶつかるのである。)

ならばと、線路の奥の方まで入れてしまうと、いざ貨物列車に連結するとき機関車が奥の方まで入っていかなければならない。「今日はやたら遠くまで走らすんだなぁ」と操車係、機関士に一言頂くことになる。

こうして、最初に貨車を止める位置が決めるとブレーキをかけ、次に突放されてくる貨車のブレーキをとりにいく。(ブレーキをかけることをブレーキをとると言っていた。)

すでに止められた貨車があればそれに連結させていくのである。これがまた難しいが面白くもある。
えい車(荷物を積んだ貨車)と空車では、当然ブレーキの効きが違うし、トキなどのようにブレーキの良く効く貨車、パワムのように効かない貨車など様々である。
そんな貨車達の状態にあわせてブレーキをかけながら止まっている貨車に連結させるのである。ゆっくりと進んで行き、「カチャッ」と静かに自連の錠が降りる音がして止まれば大成功である。
時には「ドーン」と派手な音をたててぶつかることもある。
また、時には連結する手前で止まってしまうこともある。10数cmから4~50cm程度の間隔があいた時には、次に連結する貨車をちょっと強めにあたるように連結させるとその惰性で間をつめて連結できることもある。(ただし、あまり派手に当てると積み荷が心配だが。)

文面で書けばこのような繰り返しであるが、実際には1両ずつ連結するのを見届けて次の突放を行う訳ではない。
ブレーキをとる構内係の数にもよるが、操車係は結構次から次へと突放してくれる。
慣れた構内係なら、貨車の状態、線路の勾配の状態を判断してある程度まで車速を落とし、数メートルから十数メートル手前で貨車から降りて次の貨車のブレーキをとりに行ってしまう。あとは、貨車が一人で走っていって、軽い衝撃音とともに連結されることになる。

問題は慣れない構内係だ。これなら大丈夫だろうと貨車を降りて、次の貨車の処理をしているとガシャーンと大音響でぶつかっていたりする。悲惨なのは、次の貨車を強くぶつけたくらいの惰性では連結できないくらいの間隔が開いて止まった時だ。よほどの距離が開いてしまった時や、機関車がすぐ近くにいる時は操車係にお願いして機関車で押してもらうこともできる。
しかし、数メートルくらいしか離れていない時や機関車が近くにいない時は...入れ換え作業が終わったあと自分で押すのである。

空車の場合、前後に揺さぶるように力を加えていくとア~ラ、不思議、そのうち動き出す。
えい車の場合もよほど重い積み荷で無い限りなんとか動き出す。数両動かす必要がある時は、比較的楽である。まず一番最後の貨車にブレーキをかけておき、最初の1両の自連をきり、貨車と貨車の間に入り、片側の貨車に背中を付け反対の貨車に足をかけて踏ん張るようにして貨車を押し出すのだ。背筋力、脚力の勝負である。これなら結構簡単に貨車は動き出す。
こうして、1両ずつ押していき連結していき、さあ、問題は最後の一両。
これに重い積み荷があると苦労する。
揺さぶっても動き出さない場合は最後の手段。貨車の下に潜り込んで、車輪や車軸を手で回すようにして押すのだ。
これまた不思議で、貨車全体を押すよりも動き出すことが多い。
それでもダメなら仲間を2~3人呼んで..

また、1~2両ならともかく、貨物を満載した10数両から20両くらいの貨車を長距離突放することもある。一両のブレーキをかけては飛び降りて次のブレーキをかけ、そしてまた飛び降りて次のブレーキをかけるということになる。このような長編成、重量車、長距離の突放の場合は2~3人の構内係でブレーキをとる方が安全だ。..というより、一人では怖い。
ちなみに、水平に見える駅構内でも僅かながら線路の高低差があり、突放した車両も自然に加速したり、減速したりすることがある。
長編成、重量車の突放ではこの傾向が顕著である。
この高低差も考慮してブレーキがとれるようになれば構内係も一人前だ。

一つのポイントに向かう線路同士の間には車両の接触限界を示す車両接触限界標識がある。


車両接触限界標識はポイントに向かって線路中心距離が4m以下になる箇所に立てられ、この標識からポイント寄りに車両を留置してはならないことを意味している。
(写真では赤丸で示している標識)

写真の車両接触限界標識は甲号である。他に高さ1200mmの角棒のような乙号がある。乙号は積雪地用である。


10数両のパワムもまとめて突放されることもある。